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アレッ人図鑑

一人ひとりの存在が価値。コワーキングスペースの”おかん”になるー皆川美咲さん

 

プロフィール

皆川美咲(みなかわみさき)
1997年3月27日、茨城県水戸市で生まれ育つ。実家が米や野菜を栽培する兼業農家で、幼少期から日常的に自然に触れた生活をおくる。その中で茨城県の魅力度ランキングが最下位だったことに悔しさを感じ、地元の農産物の魅力をより伝えたいと考え、身近な存在だった「農」について深く学ぶために栃木県宇都宮市の宇都宮大学農業経済学科に進学。現在は若者の力を活かし地域活性に貢献する『NPO法人とちぎユースサポーターズネットワーク』でスタッフとして活動しつつ、社会をより良くするための発酵食品を手掛ける『株式会社アグクル』でスタッフとしてもマルチに活動している。

第1章:áretに来るまで

「もともとは故郷に帰るつもりでした」

 

実家が兼業農家という「農」が身近にある環境で生まれ育った美咲さんは、農学部への進学を機に栃木県に来ることとなる。当初、大学で農業について深く学び、その知識を活かして故郷の茨城県の農業に携わりたいと考えていた。

しかし、様々な経験を通し栃木県に残ることを決意する。

 

「大学在籍中に株式会社アグクルという発酵食品を手掛ける会社の立ち上げから携わることになって、そのことが栃木県に残ることの決意を固めました」

 

 

アグクルとは、「毎日の食卓から病気にならない体づくりをする」というビジョンのもと、予防という観点から食卓を囲む人が心身ともに健康になることを大切に発酵食品を手掛ける株式会社である。

立ち上げ当初から、マルシェ出店や会社の未来についての話し合い、赤ちゃんのための麹甘味料を広める活動などに関わってきた。

 

「アグクルでの活動は、農産物の魅力を伝えたいというかつてからあった想いにとてもよく似ています。お米は生産者側からするとつくるもの。消費者側からすると食べるもの。そこに認識の違いが生まれて距離ができてしまう。お米は誰かが作っていて誰かが食べているという認識を持ち、生産者と消費者の距離をもっと近づけたいという思いがアグクルにはあり、その部分にとても共感しました」

 

 

美咲さんはアグクルで活動をする上で、商品に使われているお米を育てる農家さんの顔が見えるようにすることを大切にしている。

 

「スーパーで野菜が売っていると安いほうが良いですよね。でも、この野菜はこの人の手によってこんな想いで育てられたというストーリーが見えれば、多少高くてもそれは価値となります。安ければ良いの買いたたきでなく、良いものが失われてしまわないように正しい価値を伝えていく。本当に良いものを作っている人と商品がいつまでも残り続けてほしいという思いから、生産者の姿を可視化し、そのものの価値を伝えることを大切にしています」

 

アグクルに関わりはじめたことを契機に栃木県で就職することに決め、同時期に農業の会社に就職することとなる。

しかし、入って分かったことは「古い体勢の横行」だった。

 

「年が上というだけで言うことをすべて聞かなければいけない。八つ当たりや理由も聞かないで怒鳴り散らされることもありました。アグクルとの副業も認められなくて、自分らしく生きられなくて、ずっと窮屈に感じていました」

 

 

そんな想いを抱きつつ、農業に関わることが夢だったこともあり、自分なりに1年間頑張って働いた。

しかしふと、「いまこの職場にいてもいいのかな」と感じ始める。

 

「仕事自体は楽しいけれど、自分の頭の上に20~30kgの重さのものを持ち上げたりして、まだ体力のある今でさえも辛いのにこれから先何十年も働き続けられるのかな…と先のイメージが沸かなかったんです。加えて、『お前っていつも未来に希望があるみたいな顔して、まじでムカつく』と職場の人に言われたことがあって。その時は、どうしてそんな嫌な思いをしてまで、働かなければいけないのかなと悲しくなりました」

 

相手の気持ちを考えず自分だけの価値基準で物事を判断する人のいる職場に息苦しさを感じ、当時、自身の働き方についてこのままで本当にいいのかと悩み苦しんでいた。

そんな折に、とちぎユースサポーターズネットワークの代表理事 俊宗さんに出会う。

 

「もともとユースの印象はキラキラしていて、正直一生関わることのない意識高い系の団体かなあなんて思っていました(笑)どこか遠い存在のように感じていたユースだったけど、俊宗さんと話して頭がとてもクリアになったんです。ユースのスタッフもみんな心から優しくて。ビジョンや想いに共感する部分もたくさんあって、ここで尊敬できる人たちと共に働きたいなと思うようになりました」

 

 

美咲さんにとって今までの働き方とは、言われたことをやるということ。しかし、本当にこのままでいいのか?という気持ちが心の中にあり、とちぎユースサポーターズネットワークで活動することによって自分自身で考える力が鍛えられ身につくのではないかという気持ちも重なり、2020年4月に合流することとなる。

 

 

第2章:áretに来てから

 

現在、美咲さんはとちぎユースサポーターズネットワークで事務総務周りの省力化やáretの管理・運営を行っている。

 

「今はáret運用の仕組みづくりを行っています。áretに来た人がどうしたら快適に過ごしてもらえるか、どうしたら居心地のいい空間になるか、どうやってイベントを知らせようか…。考えることはたくさんあるけど、áretの利用者が増えて色んな人に出会う楽しさを想像するとわくわくします。áretに来る人がもっと増えたら、きっと今よりもずっと楽しいなと思います」

 

áretという箱で新しいことをイチから企画設計することの難しさを日々実感しながらも、全く型がないことを考えることにやりがいを感じている。

 

「áretは物理的に居心地が良いだけでなく、人を含めての心地良さが魅力です」

 

áretにいる人はみんな思いやりに満ちていて、実現したい夢のために努力を惜しまない。

美咲さんが仕事をする上で重視することは、「一緒に働きたいと思える、尊敬できる人たちの中で働くこと」

 

「休みやお給料がたくさん欲しいとは思いません。高い水準で生活をしたいという欲はなく、お金のために働いているんじゃないな、と。仕事は人生において大部分を占めるもの。どんな人と共にどんな時間を過ごすかが重要だと思うので、日常生活においても、どんな人と共に生きていたいかという想いを大切にしたいです」

 

 

人として尊敬できる人と共に働くことを大切にしているからこそ、áretで一人ひとりが努力している姿勢は尊敬すべきものとして目に映る。

特に、とちぎユースサポーターズネットワークの代表理事、俊宗さんの姿勢に強く励まされている。

 

「俊宗さんは初めからできることを求めるのでなく、一緒にできるようになっていこうという姿勢を見せてくれます。その成長を見守ってくれる姿勢がとても嬉しいです。少し気持ちが楽になって、また前を向いて頑張ろうと思うことができます」

 

また、美咲さんはáretにいる意味を自分の可能性の広がりと紐付けて考えて語ってくれた。

 

「人に流されずに主体的に生きていたいです。なんとなく選択して生きてきたので、自分で考えて行動できる力がほしいとずっと思っていました。áretでならその力が身につくんじゃないかと、そう思っています」

 

 

第3章:áretから見る未来

 

「ゆくゆくはáretの“おかん”になりたいと思っています(笑)ここにいる誰かの話を聞いたり帰って来た人におかえりと言える、そんな存在になりたいです」

 

自分から積極的に突き進んでいくのではなく、そういった人たちを支える役割を担う。頑張る人を支えることで感じる、人の役に立っているという実感が嬉しい。

加えて、áretに新しく来た人を迎え入れ今まで関わりのある人たちとつなげるという役割をも担えたら嬉しいという。

幼い頃から自分だけが得をしたいという欲がなく、ここにいるすべての人の満足度をどれほど上げるかという『全体幸福』を思考する美咲さんにとって、みんなの喜びや幸せが自身の幸せにつながっている。

また美咲さんは、áretに様々な人が集うことの面白さに、”種種雑多な人々が集うことで多様な価値観が育まれる。その価値観の分だけ物事の見方に触れることができ、自身も物事を多面的に考えられるようになる”という可能性を感じている。

 

 

「áretは、これからも多様性あふれる場所であってほしいと思っています。外では頑張っているけど疲れた時にはここに来て話がしたい人、素直になれなくて強がってしまう人、学校に行けない人、地域のおじいちゃんおばあちゃん。色んな人が存在していて、ひとりひとりの存在を価値として互いに認め合える空間になれたら良いと思っています」

 

 

美咲さん、ありがとうございました!誰に対してもどんな時でもにこにこ笑顔で、元気いっぱいの明るい美咲さんがこの拠点に来ることになった経緯と意味を初めて知って、胸が詰まる想いでした。明るい笑顔の裏に抱えているものや感じていること、考えていることがいまの美咲さんの気配りや優しさにつながっているんだなあと改めて感じることができて、とても嬉しかったです。áretにいることで自分自身で考えられる力が身につくんじゃないかという言葉を聞いてáretの可能性について再確認するとともに、そこに気づけている美咲さんはこれからもっともっと素敵な人になっていくんだろうなと思いました。いつの日かáretの“おかん”になって、温かな心でみんなを癒やしてくれる日が早く来ることを夢見ています…*(取材・編集・カメラ:まい)