福島の電子機械会社での幹部研修レポート
2025年冬、福島県内のある電子機械会社にて、全社員約200名のうち幹部クラス約30名を対象とした全5回のマインドフルネス研修を実施しました。講師は、光琳寺住職であり、心理学と仏教を融合した企業研修で高い評価を得ている井上広法。
この取り組みをきっかけに、住職は新たな企業研修プログラム
「CORE(Compassion・Observation・Resilience・Engagement)」を構築。
仏教と心理学の叡智を土台に、現代の組織に必要な“心のリーダーシップ”を育むことを目指した、全5回のプログラムです。

研修のテーマと構成
各回は2時間半、講義・ワーク・対話・瞑想を織り交ぜながら進行。以下のようなテーマに沿って展開されました。
- 第1回:Compassion(共感)
共感が組織の土台になることを学ぶ。思いやりの神経科学とその実践。 - 第2回:Observation(自己洞察)
相手を理解する前に、自分の状態を観る。マインドフルに気づく技術。 - 第3回:Resilience(心理的回復力)
“苦しみ”の仕組みを理解し、折れずに立ち上がる力を高める。 - 第4回:Engagement(関係性の構築)
一人の変化が文化をつくる。自由で開かれた関係性の醸成。
心理的安全性のある職場環境を育み、自由で開かれた関係性を醸成する。 - 第5回:CORE統合セッション
学びを統合し、組織にどう根付かせるかをチームで対話・設計。
各回の最後には、「アクションプラン」を作成。自分の仕事にどのように活かすか、日々の行動に落とし込むことを重視しました。
実感された変化と気づき
研修を通じて、参加者の言葉は回を重ねるごとにより素直に、より深いものへと変化していきました。最終回のアンケートでは、参加者の93%が「自分自身を見つめ直す良い機会になった」、**89%が「職場のコミュニケーションに活かせると感じた」**と回答。
自由記述には、こんな声が寄せられました:
- 「STOPの実践で、無意識の反応から解放される感覚があった」
- 「まずは自分を大切にするということの意味が、ようやく腑に落ちた」
- 「他者の話を“聴く”ことの難しさと尊さを、実感できた」
- 「苦しみは“痛み×思考”という言葉が印象的で、自分を苦しめているのは自分自身の解釈だと気づいた」
中には、「これまで他者のために尽くすことこそが美徳と思っていたが、自分をいたわることが持続的な利他の土台になる」と涙ながらに語られる方もいらっしゃいました。
こうした率直な対話が生まれた背景には、心理的安全性の高い場が育まれていったことが大きく関係しています。回を重ねるごとに安心して話せる空気が醸成され、受講者同士の信頼感が深まっていったのです。
住職のコメント
仏教には「自利利他円満(じりりたえんまん)」という言葉があります。自分を整えることが、結果として他者へのやさしさにつながるという意味です。
CORE研修を通じて、まさにこの思想がビジネスの現場にも手応えをもって響いていることを、現場の空気から感じました。
現代の組織に必要なのは、対立ではなく共感、急ぐのではなく立ち止まる余白。
“誰か”ではなく“自分から始める”――その小さな連鎖の起点となることを願っています。

ご依頼・ご相談について
「CORE」は、組織ごとの課題に合わせたオーダーメイド設計が可能です。
心理的安全性・共感力・感情調整・観察力を育てたいとお考えの企業様は、ぜひご相談ください。
▶ 講師プロフィール
井上 広法(いのうえ・こうぼう)
栃木県宇都宮市・光琳寺住職。佛教大学にて浄土学を、東京学芸大学にて臨床心理学を修め、仏教と心理学の両面から“心のしくみ”を探究。伝統仏教の教えを現代社会に活かすべく、全国で企業研修や講演活動を展開している。
研修・講演では、マインドフルネス、セルフコンパッション、共感力、リーダーシップ、レジリエンスなどをテーマに、「気づきと変化」をもたらす場づくりを重視。ANA、メルカリ、サントリー、ソフトバンク、JTなど、業種を問わず多数の企業研修に登壇し、好評を博している。
また、仏教を通じた社会貢献にも力を入れており、Q&Aサイト「hasunoha」開設、テレビ番組「ぶっちゃけ寺」出演、子どもの命の教育「いのちの積み木®」開発など、幅広い活動を通じて仏教と現代をつなぐ実践を続けている。
著書に『心理学を学んだお坊さんの 幸せに満たされる練習』(永岡書店)がある。される練習』(永岡書店)など。