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アレッ人図鑑

人々の豊かな暮らしを建築面から支えるー渡辺純一さん

「マルモコハウス経営者 áretデザイン・建築-渡辺純一さん」

 

第1章:áretに来るまで

 

「大学に進学することは考えていなかった」

 

木を活かしながら様々な建築物をデザインするマルモコハウス経営者、渡辺純一さん。純一さんは、都内の普通科の高校に通いながら畳屋でアルバイトをする生活を送っていた。

アルバイトと遊び、なんとなくしていた勉強の学校生活も終わりに近づき、次の進路選択をする時が来た。

「ふと、イタリアへ行こうと思いついた」

 

そう思い立ち、その年の夏にイタリアへ旅立つことを決意。

その後、イタリアで語学を勉強している最中に、マルモコハウスの社長の娘さんと出会う。この出会いがきっかけで、日本に帰国後、建築関係の仕事を始めることとなる。

「専門学校に1年通ったが肌に合わず、いきなり現場に入り現場監督を行った」

 

都内の高層ビルなどを手掛ける現場は、純一さんにとって仕事をしながら建築が学べる最適な環境だった。

結婚を機に縁もゆかりもなかった栃木県に行き、宇都宮の花火大会や青年会議所(JC)など様々な団体と関わっていく中で仲間づくりをしていた最中、光林寺住職の広法さんと出会う。

 

第2章:áretに来てから

2018年11月ごろ、広法さんから空き家をリノベーションしてコワーキングスペースを作りたいという話が上がる。

事例を研究し、ヒアリングや調査を重ねて、翌年の春にいざ契約の日となった。

 

「リノベーションと新築、どっちがいいと思う?」

 

契約日当日、契約書を前に広法さんからそう言われた純一さん。

突然の提案に驚いたものの、より長く使うことと快適性をさらに高めた空間にしたいという気持ちを受け、新築として一からリデザインすることに決定。

コワーキングスペースをつくるにあたって入念なヒアリングや調査を行っていたこと、リノベーションという枠に囚われずに一から新しくデザインを考えられるようになったことで、新たなアイデアがたくさん出た。

「箱の大きさは変えられない。だからこそ、拡張性の高い建物にすることにこだわった」

 

明確に目的が定まっている建物は余力がない場合が多い。改変コストがかからないようにするためにも、建築用途によっては”拡張性”は大切なキーワードなのだ。

契約内容の変更から1か月ほど経ち、建物の細部を形作るデザインをすることとなった。

「デッキに立ったときから世界が変わるような、その先に別の世界が広がっているようなイメージ。エントランスに入る前から空気が変わるようなデザインにした」

 

純一さんは、”物理的な拡張性”だけでなく、その先にある想像力を掻き立てるような”イメージとしての拡張性”を大切にしたと語る。

また、照明にもこだわりが込められている。この場所に集まる人たちはクリエイティブな人が多いという想定の下、光の入り具合や目の負担を軽減するために自然光に近い光を演出すること、目で見たままの忠実な色が再現できるようにデザインを行った。

さらに、スタジオ、アトリエ、個展など用途を選ばない空間、どんな色にも染められる空間にしたいと思い、壁を白くし塗装した。

 

こうして、こだわりぬいた空間『áret』が完成する。

 

建築デザインをする際の心意気について純一さんはこう語る。

「一番のこだわりは、自分が居心地の良いと感じる空間を創ること。自分自身がユーザーになったとイメージしてデザインする」

 

依頼のあった仕事をすべて”自分ごと”として行うこと。そうすることで、より快適さや利便性を追求することができるのだという。

「建物の物理的な構造だけでなく、そこを使う人のライフスタイルを考えてデザインする。箱が無ければできないことはたくさんある。依頼主の夢や想いを実現するためのスタートラインに関われることは嬉しい」

 

純一さんは建築に携わることの喜びをそう語った。

 

※写真はマルモコハウス外観と社内事務所
「僕はデザイナーというよりもエンジニアです。デザイナーのようにとびぬけてかっこいいものを一から創り上げることはできないけれど、依頼主の想いを取り込んでエンジリア二ングする。最適化してフィードバックする。こういうものを作るにはこれが必要だね、と多くの引き出しの中から最適なものを掛け合わせ、提案しています」

 

 

重みを含んだはっきりと淀みのない言葉、細やかな配慮が施されたáretという空間、事務所のあちこちに散りばめられたマルモコハウスのクライアントに寄り添う姿勢から、製作者としてクライアントの想いに沿りつつもそれ以上の提案をするという純一さんの確固たる想いが透けて見えた。

 

第3章:áretから見る未来

 

「áretは、一つのストーリーを発信する場所であってほしい」

 

人と人とが出会うことで多様なストーリーが生まれていく。純一さんは、áretを使う人たちがそれぞれのストーリーを生み出せるような場所であることを望んでいる。加えて、何か発生した事案に対してポジティブに取り組める人に使ってほしいと考えている。

物事をポジティブに捉える人々が集うことで発想や行動の幅が広がり、面白いストーリーが生まれる。そうすることで周りにも似たような人たちが増え、自分自身ももここに居たいと思えるような場所となる。

「魅力は、何も考えずにふらっと来れる場所であること。立ち位置が明確で何か目的をもって行く場所は日常にたくさんある。立ち位置を意識しなくても良い場所だからこそ、フラットに互いが向き合える」

 

そう語る純一さんは、あらゆる人にとってáretが新しい挑戦ができる場所であってほしいと考えている。

 

 

「何をやるにも目的やミッションを果たすだけのものは破綻しがち。人と人とのつながりにはシンパシーや仲間意識が必要。良いところを取り込んでダメなところを変えていく柔軟性と、そのための譲り合いの心が大切だと思っています。信頼関係ができれば、その場所で自ずと新しいことが生まれるはずだから」

 

 

 

純一さん、ありがとうございました!普段は面白くて周りを笑わせてくれる純一さんですが、お仕事に対する姿勢と眼差しは真剣そのもので、地域でお仕事をすることの意味がまっすぐな想いとともに伝わってきました。”拡張性”と”自分ごと”のキーワードがお話の中で特に印象深く、設計一つをとってみても自分がユーザーであったらどうあってほしいか、の部分を大切にしているからこそ、細部にまでこだわった空間が出来上がるのだと改めて感じました。これからの地域はもっと純一さんの力でより輝くのだと思うと、今から楽しみな気持ちでいっぱいです。(取材・カメラ(áretの外観以外)・編集:まい)